玉川聖学院 中等部・高等部

いつまでも残るもの
~この時代の教育を考える

いつまでも残るもの<br>~この時代の教育を考える

新生会60周年記念コンサート

夏のワークキャンプとクリスマス訪問でお世話になっている榛名新生会(原慶子理事長)の創立60周年を祝って、9月23日に現地に赴き玉川聖学院コンサートを開催した。バス2台を連ねて参加した音楽系のクラブの生徒たちとともに、終始変わらずに暖かい心で迎えてくれた入居者およびスタッフへの心からの感謝の思いを伝えることができた。聴衆と一体となった素晴らしいひと時を持つことができた。ここを訪れた生徒・卒業生は2000名を越しているが、今までにたくさんの心動かされる体験を与えられたことを噛み締めながら、一日を過ごすことができた。以下は、記念文集に記した文章を掲載したい。

「ボランティア、体験学習」~たくさんの愛をありがとう

 玉川聖学院高等部の20名の生徒たちと共に初めて新生会を訪れたのは、1980(昭和55)年の夏のことでした。3泊4日のボランティアキャンプを行うことを許していただき沢山の体験を得て帰京したのは、その印象があまりに強かったこともあり、つい先日のことのように思い起こします。その当時老人ホームは、高い壁の向こう側の世界で、そこで宿泊ボランティアをすることは考えることすらできなかった時代に、何も分からぬ高校生たちを受け入れて下さり、数多くの出会いと深い関わりの場を与えられたことは驚くべき事実でした。原正男理事長が高校生たちにも礼を尽くして見送りにこられたあの日のことは、忘れられません。

 私たちの学校では、夏のワークキャンプとクリスマスのキャロリング訪問による新生会との交流を、その後38年間変わることなく継続させていただきました。その間に新生会の施設は次々に立派になり大きくなりました。ボランティアのための宿泊施設まで建設していただき、ここを訪れるボランティアの数も拡大していきました。私はこの期間に毎年訪問させていただいてきましたが、いつも感動するのは新生会が終始一貫変わらなかったこと、新生会創業の精神が見事に守られ続けているという事でした。

学校でも病院でも施設でも、評判が良いと規模が拡大し、大きくなり組織が整えられると同時に、創業時の精神が希薄になっていくという矛盾が見られるのですが、この新生会は「変わらない」。原慶子理事長や各施設の責任者たちのみならず、現場のスタッフたちが一貫して、「すべての人間をリスペクトする」気持ちと行動を失わない。さらに磨きをかけていることを垣間見させていただきました。ここを訪れた私の学校の生徒たちは、母子二代にわたる人を含めて、のべ2000人近くになりましたが、得られたもの心の中に刻まれたものは、言葉で表すことの出来ない貴重な経験です。それが毎年更新され続けてきた38年であったと思っています。

近年、老人ホームや障害者施設をめぐる悲しい事件が各地で起きていることが報道されています。そこにあるのは閉じられた関係の中で疲弊してしまっている福祉現場の姿です。窓のない部屋に光が差し込まないように、心の窓が閉じられた場所で人間性が破壊されていくのを見せられているように思うのです。

この新生会は部外者を含めあらゆる人に開かれた施設です。芸術や文化の窓も大きく開かれていて、そこから差し込む光も豊かな彩りを作っています。この開放性は人間への信頼を基礎においていることの証明でしょう。人と積極的に関わることを「愛」と呼ぶなら、ここは愛が満ち溢れている場所と言えるでしょう。そして新生会60周年に当たり心を込めて、「たくさんの愛をありがとう!」と伝えたいと思うのです。