玉川聖学院 中等部・高等部

帰国子女入試合格発表

いつまでも残るもの
~この時代の教育を考える

いつまでも残るもの<br>~この時代の教育を考える

パイオニアたちのその後

 毎年この時期に、高等部卒業後20年を経た人たちを招くホームカミングが催されている。今年も2002年度の卒業生たちが母校に戻ってきた。中高で担任だった先生方も参集してくださった。かつての面影を残す懐かしい卒業生たちと再会し話をしていると、あの時代のことを思い出す。中学時代にヤンチャだった生徒たちが劇的に変身していき、人は変わることが出来る、成長していくことができるということを、身をもって表してくれた。

2001年9月アメリカで勃発した同時多発テロとそれに続くアフガン戦争は、世界中を震撼させた。海外への渡航は危険だ、飛行に乗るのは危ないとの噂が広がり、多くの学校で修学旅行が中止となってしまっていた。本校では折りしも翌月に、初めての韓国修学旅行が準備計画されていた。
外務省から発信される海外安全情報では危険度は極めて低いとされ、現地でも歓迎態勢にあることを知り、「本当に危険があれば前日でも中止するが噂だけで判断はしない」ことを保護者に説明の上、韓国修学旅行を実施した。ガラガラの成田空港から釜山に向けて飛行機が飛び立った日のことを思い返す。
まさに21世紀の国際交流のパイオニアとなった彼女たちは、現地で大歓迎され、充実した旅行を成し遂げることができた。保護者の全面的な学校への信頼と教職員の一致を背景に、新しい時代を開拓していった彼女たちの足跡は、その後今日まで続く韓国との交流の先駆けとなっていった(残念ながらこの2年間、コロナ禍により断念せざるを得ない現状が続いているが、オンラインで姉妹校との交流は行っている)。

最近、ニューヨークのユニオン神学校で、ジェームズ・コーン教授から解放神学を学んだ榎本空さんの本を読んだ。彼がコーン教授から教えられた中で、最も印象深い言葉として心に残っているのは、「自分の声を見つけなさい」(Find your Voice)だったと書いている。学ぶことができたこと、知り得たことは山ほどあったが、思い出すのは机を叩きながら、伝えられたこの言葉だったという。自分自身で考えて、自分を確立せよとのメッセージだったという。人の思想を解釈するのはなく、自分を生きた言葉で語れと教えられたという。

卒業後20年、彼女たち一人一人が自分の人生航路を、今開拓中であることを知った。さまざまな領域で「生の冒険」をしつつ、今もパイオニアであり続けていることも知らされた。大いに頑張っていることに励まされた。今日の世相を見ていると、暗澹たるものを感じる日々ではあるが、我が道を堂々と歩み続けていることを知り勇気づけられた。まだまだ道半ばで、これから先も迷うことはあるだろうが、「魂の故郷」がここにあることを心に留めつつ、自分の言葉を発し続ける生き方を続けてほしいと切に願わされた1日であった。