新年度から、玉川聖学院の「保護者のための思春期セミナー」が開始された。今まで学年の必要に応じて学び会が開かれたことがあったが、学院として定期的な学びの時を設けることになり、およそ月に一回のペースで様々な課題の学びの時が用意されている。毎回講師は異なるが、共に学び共に考えていく機会としたい。人間学講座、人間学読書会共々、開かれた学びの場として用いていただけると幸いだ。せっかくの学びの機会なので、紙面にて少しずつ報告をしたい。
第1回 5月25日 (金)
① はじめに 「思春期セミナーを開始するにあたって」
櫛田中高等部長からの挨拶があった。
②「静まりの時」
セミナーの最初に、少し「静まる時」を持った。心に隙間を作って、そこから新しい風を入れるために、立ち止まって慌しい日常から離れる時間を持った。
音楽 ラフマニノフの「ヴォカリーズ」 (チェロ:ミッシャ・マイスキー)
③「体のメンテナンス」 保健室 久能木 共子 先生
保健室の窓から見えることと題して、子ども達の成長の過程で現実に起こってくる様々な問題を具体的に紹介した。とりわけ、成長には個人差が大きく、アンバランスな状態に陥ることも多いこと、だから一人一人をよく見ながら、今ほんとうにひつような手当や援助を考え、適切な言葉かけと接触をしていくことの重要性が強調された。
とりわけ、体の不調という形で現れる。頭痛や自律神経の失調、貧血や不眠などの変化は何かのサインであり、そのメンテナンスを通して子供達に寄り添っていくことが家庭の役割であること、学校では家庭の援助をしていることが紹介された。
思春期に多いのが睡眠をめぐる問題だ。最近はスマホやTVの影響が大きく、光に敏感な思春期には、体は太陽の光と同じ反応をするので、それを浴び続けると睡眠には入れなくなり、夜の使用は時差ぼけの症状を起こしてしまう。正しい生活リズムを作ることが心身の健全な育成には必要不可欠であることが語られた。ネット依存は病気の扱いになることが紹介され、それを放置してはならない。賢く脱出の道筋を見つけることが必要と語られた。
思春期の子どもと向き合うためには体のメンテナンスを通して子どもに近づいて、「下宿のおばちゃん」の如く、ゆったりと話せる間の取り方を取ることと、親自身が健康であることを語られた。
④ 「心の容量」 保健体育科 熊谷 順子 先生
熊谷先生は保健を担当して生徒達の成長を側面からサポートしているが、ご自身も5人のお子さんを育てた経験から、まず、子育ては一人ではできないこと、誰かに助けてもらうことが大事だと語り始められた。
データをもとに、日本の子どもの自己肯定感の低さを示し、子ども達が「前切れ状態」に陥っているのは、「心の容量」いっぱいに様々な心配や悩みが詰まっているからだということを、皆で確認しあった。
思春期の子ども達は家でも学校でも様々な問題を抱えて、自分のこと、友達のこと、勉強のこと、部活のこと、進路のこと、兄弟や親、先生のことなどのストレスを抱えている真っ最中であるのに、そこに否定的な言葉が注がれると、溢れてしまうことが語られた。
また、親自身も心の容量は子どもより大きいはずだが、それも一杯いっぱいになっていると、子どもの反応で切れてしまうことがあることを、演習的な話し合いを実施しながら皆で確認しあった。
いずれにしても「心の容量」に余地を作ることが大事だが、そのためには、子どもを一面から見るのではなく多角的に見ること、自分の枠だけでなく、別の人の見方を参考にすること、共に過ごす時間を死守することがヒントとしてあげられた。そして最後に吉岡たすく氏の「あきらめないでお母ちゃん」の一節が読まれた。
⑤ 分かち合い
その後、近くに座っている方同士(4〜6人)で、聞いた話をもとに分かち合いの時が持たれた。20分の時間があっという間に感じられ、どのグループでも非常に活発な話し合いがなされていた。初めての人同士でも、打ち解けあった時間を共有していた。その後、そこで出た話を少し全体でシェアーする時を持った。
⑥ 絵本・読み聞かせ 司書教諭 鳴川 浩子 先生
最後に再び心を自分に向けるために図書室の鳴川先生のお気に入りの絵本、くすのきしげのり作「おこだでませんように」(小学館)を読み聞かせてくれた。先生の関西弁がとてもしっくりと来て、主人公の心の思いが伝わってくるホンワカとした時間を過ごした。
最後に一枚の絵、ラファエロの「聖母子」(大公の聖母像)を見て、聖母マリアの手のぬくもりのような安心感を与えられるようにと伝えて、感想カードを記入して終了となった。盛りだくさんの内容だったが、帰る時の皆さんの表情がとても穏やかで、心地よい時間を共に過ごせたことを見ることができる1日だった。
次回 6月15日 (金) 14〜16時
講師 小渕 朝子 氏 (玉川聖学院カウンセラー)
テーマ 「 アンガーマネージメント(心の怒りを鎮める)」