先日、管理職になる前、今から20数年前までクラブ顧問をしていたギターマンドリン部の卒業生達40名近くが学校に集まった。顧問を囲む会と称して旧交を温めるひと時を持った。皆、それぞれの人生を辿りつつ今を迎えている15年間の顧問時代の卒業生たちとの再会は、懐かしさとともに様々な気づきを与えてくれた。皆、いい具合に年を重ねていた。
青春時代にひたむきに一つのことに打ち込めることは幸いなことだ。音楽系のクラブ活動だが、時代の空気もあったのだろう、運動部のような厳しさと一途に打ち込むことを受容する環境が揃っていたのかもしれない。思い出話に花が咲いたが、上級生と共に合奏する緊張感のこと、夏合宿では壁の模様までが五線紙や音符に見えるほど、譜面と格闘する日々だったことなどを皆が回想していた。泣いたり笑ったり、集団としてまとまるための苦労や心を合わせるための努力の数々が青春の思い出として蘇ってくることを口々に語っていた。マンドリンアンサンブルの醍醐味は心と技術を合わせて合奏する喜びだが、それぞれの年代ごとに生み出された音楽の響きは、皆の心の中に深く刻まれて残っているようだった。
高校時代の経験を振り返り、一生懸命に一つのことに取り組めたという経験は、大事な人生の土台となったのだろう。素朴で純粋で柔らかい心の時代に出会った数々の出来事、その中には困難なこと、逃げ出したくなるようなこと、失敗や挫折、思わぬ誤解や伝わらぬ思い、色々なマイナスに見える体験も多くあったが、それを超えて達成できた喜びとともに生きる自信を身につけさせたのだろう。各自の語る今日の心境は、目の前の事態に動じない、生きる強さのようなものを感じさせた。自己肯定感を持てる場を提供していくことは、やはり教育の現場が目指す大事な方向性なのだと改めて思わされた。
卒業後社会人の団体に属して演奏を続けている人、この機会に何十年ぶりかで楽器に触って再び奏でようとした人、色々な思いで演奏された有志の演奏は、集まってきた人たちが語り合っていた過去の出来事が、今にまでつながっているという確信を皆に与えていた。これが合奏の醍醐味だ。私は彼女たちのために何ができたといえるものはないように思う。いつも心配したり困ったりしながら寄り添っていただけだった。しかしクラブ顧問として特別な関係の中に起こっていた思い出を共有する人たちとの再会は、教師冥利につきるひと時となった。なぜならあの時代に願っていたように、皆が自分の人生を今も奏でつづけていることを、再会したことで垣間見させてもらったからだ。嬉しい一日だった。