玉川聖学院 中等部・高等部

いつまでも残るもの
~この時代の教育を考える

いつまでも残るもの<br>~この時代の教育を考える

「歌声を合わせて」

今年もクリスマスシーズンがやってきた。ミッションスクールである玉川聖学院では、アドベント(待降節)に入ると数多くの行事が開催され、クリスマスカロルが何度も繰り返し歌われる。何十年もその場に身を置いてきたことで、この時期に歌われる讃美歌のほとんどを、誦じて歌うことができるようになっていた。今年もPTAと同窓会(なでしこ会)そして同窓生の保護者の会(友の会)、そして音楽系のクラブの生徒と先生たち、いわばオール玉聖で行われるクリスマス賛美礼拝が先日行われた。

その会場で一人の参加者としてカロルを歌っていると、今年はちょうど30回目の節目の年であったからだろうか、この30年に出会った人たちの面影が次々に脳裏に浮かんできた。その都度、心を込めて準備した委員の人たち、そこに集まってこられた人たちの姿が、走馬灯のように思い出された。歌は過去の記憶を呼び覚ます。出会いと別れ、時代と場所の思い出、そして自分自身の姿と心・・・・。クリスマスカロルのメロディと共に、思い出と現実が合わさった多くの人たちの歌声が、ホールに響き渡っているような感じがした。

クリスマスの喜びを伝えるカロルは世界中で今も歌われている。だが世界の現実は、平和より紛争、和解より分断、愛情より憎悪が幅を利かせているように見える。声高な主張が力を持ち、不安が煽られ、きな臭さと不安を感じさせるニュースが内外に飛び交っている。しかし人間は本来、相互依存的存在であり、いつでも誰かが誰かを助けるところに人間性と尊厳が発揮されてきたはずだ。

世界中がコロナパンデミックに覆われた時、人と人との間に物理的な壁が設けられ、それ以上に分断という心の壁が立ち上がってきたとき、その世界に向かって、今年亡くなられた当時のローマ教皇フランシスはクリスマスのメッセージを発した。
「神は、人となられた方を通してこの世に来られ、出会いと対話の道を私たちにお示しになりました。それどころか、わたしたちが信頼と希望をもってその道を知り、たどれるようにするために、ご自身が道となられました。
パンデミック下の今日、わたしたちが社会で互いに結びつく力が、ひどく脅かされています。自分の殻に閉じこもり、自分だけで行動し、他の人と会って協力することを諦めてしまう傾向があります。国際的なレベルでも、対話を避けてしまう恐れがあります。複雑な危機に対し、対話という長い周り道よりも、近道をたどるリスクがあるのです。しかし、紛争を解決し、すべての人に持続的に恩恵をもたらせるのは、対話の道だけです。」
「2021年 ローマ教皇クリスマスメッセージ」

私が私であるために、自分の鏡となり自分を映し出す存在がある他者との対話を通して、自分を相対化し、孤立の穴に落ち込まずに、自分を見ることができるのだろう。「平和を求める歌声に心を合わせられる存在」を身近に感じられることは幸いだ。混沌とした社会にあっても、小さな力を合わせるところからしか生み出せない平和を作り出していきたい。